「んっ……くふぅ…………んぁっ……やぁぁぁ……ぁ……駄目……こんなこと……駄目なのにぃ……っ」

へえ。俺は感心しながらPCのモニターに映る橘冬美がオナニーに耽る様子を眺めた。
お固い生徒会長様で、空手黒帯の冬美様もただのオンナだったってことか。くくく、こりゃあ面白いモノが手に入ったぜ。

「や……だっ……ゆび……勝手に……動いちゃうよぉ……ぁぁん……んんっ……駄目……だってば……ぁ……」

駄目なら止めりゃあいいのにな。そんなにオナニーは気持ちいいかい、冬美さんよ。
俺の心に沸々と、これまでこの女から受けた屈辱が蘇ってきた……。


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「ちょっと、棟上睦! 学校に変な本持って来ないでくれる?」

「変な本? ああ、コレか。いいだろ、週刊誌くらい。みんな持ってきて……」

「そんな風に堂々と人前で読んでいるのがいけないのよ! はい、没収!」

「あ、ちょっと待てよ。それ、まだ途中……」

「ああ嫌だ嫌だ。こんないやらしい本、よく学校に持ち込めるわね。不潔極まりないわ。アンタの品性をよく表してるわね」

クスクスと笑う女生徒の声がクラスのそこかしこで聞こえる。
くそっ……何で俺ばっかり目の敵にするんだよ、この女。

「ふん、さすがは成金のボンボンね。こんな余計なものまで学校に持ってきて。何をするつもりだったの?」

冬美が俺のカバンの中にあった、ノートPCを片手で持って、俺に突きつける。

「関係無いだろ。それにパソコン持ってきちゃいけないのかよ」

「確かに校則には無いわ。でも、コレで何をするかが問題ね。中身を見せてもらうわよ」

冬美がその場で勝手にノートPCを開いて、電源を入れた。

「お、おい、止めてくれよ」

冬美の行為は明らかに生徒会長としての権限を逸脱したものだったが、あくまで強気の冬美の態度に、俺はついつい卑屈になってしまう。

「何? 見られちゃ困るものでもあるの? ほら、パスワード入れて」

俺はまるで操り人形のようにパスワードを入力してしまう。お気に入りのアニメの壁紙が画面いっぱいに広がる。

「あら、可愛い壁紙じゃない。あなた、ひょっとしてオタク?」

ぷっと堪え切れないような笑いが、さっきよりもたくさんクラス中のあちこちで漏れる。
俺はクラスの連中とは付き合わない方針なので、味方はいない。
俺は連中を見下してるし、連中もそうだろう。

「ふ〜ん……見たところ怪しいデータは無いようだけど……。あら?」

冬美がついに見つけたと言わんばかりの大声を出し、目を輝かす。

「なぁに、この『エロ』ってフォルダー? 中身を確認させてもらうわよ」

わざとクラスの皆に聞こえるように大声で言う冬美。クラスの連中の好奇心が高まっているのが分かる。
俺にとっては死刑宣告に等しい言葉だった。

「や、止めろッ! 止めてくれ!!」

俺が止める暇も無く、冬美はフォルダーを開いた。みるみるうちに、冬美の表情が嫌悪に変わる。



「……睦、あなた、こんなのが好きなの? 信じられない! ねえ見てよみんな!!」

冬美が他の生徒会役員達に俺の秘蔵画像の数々を見せてまわる。クラスの連中も集まって来て、覗きこむ。

爆笑。嘲笑。失笑。そして軽蔑の視線が俺に突き刺さる。
無理も無い。冬美の言う通り、金持ちのボンボンである俺は、金の力でノーマルなセックスは経験済みだ。もちろん風俗でだが。
だから自然と興味はもっと過激なものに向く。おそらく連中はスカトロやらフタナリ画像を見て奇声を上げているんだろう。

「ああ、嫌だ。こんな変質的なものを学校に持ち込んできてるなんて。このパソコンは没収させてもらうわよ」

「ま、待ってくれよ……データだけでいいだろ。パソコンは返してくれよ」

「駄目よ。他にどんないやらしいものが入っているか分かったものじゃないもの。新しいのはパパにおねだりすれば?」

またクラス中で爆笑が上がる。俺の親父はこの街の議員だが、評判のいい人間じゃない。
現に金で人を買収してる場面を、俺は何度も見ている。
それを知ってるからこそ、皆は俺を嘲り、笑いのめすのだ。
悪徳権力者の息子を見下し、嘲笑するのはさぞや楽しいだろう。
俺はいたたまれなくなって、その場を逃げ出した。
みっともないとは分かってはいたが、公開処刑のような場にいられるほど、俺はタフじゃない。

「あ、逃げちゃった〜」
「カワイソー」
「トイレにでも行って泣くんじゃねえの?」

「最低ね。プライドも何もないのかしらね」

俺を嘲る声と、笑い声を背に、俺はひたすら廊下を走った……。


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誰かが言ったように、トイレの個室にこもって時間をやり過ごした俺は、誰もいない教室に、ようやく戻った。

「クソッ! クソッ! クソッ! あのクソアマ、俺のパソコン返しやがれッ!!」

ヤケになって、冬美の机を蹴った。その拍子に、机から冬美の携帯電話が転がり落ちた。



「……ケッ、生意気にスマートフォンなんか使いやがって」

拾い上げてみると、今流行りのメーカーの最新機種だった。

――と、俺の頭にある考えが浮かんだ。

「待てよ。そういやあ、この機種って……」

「……へへっ、見てろよ冬美。お前に地獄を見せてやるよ」

俺は知り合いのサーバーから、素早くあるアプリを落とし、そいつを冬美のスマートフォンにインストールした……。